雨 Ⅱ
雨 Ⅱ
鏡の中の彼女は 今にも泣きそうになっている
右腕のブレスレット時計に目をやり
小さなため息をついた
もう確実に間に合わない
電話をしなければ・・携帯電話に手を伸ばし
再び小さなため息をついた
「どうして こんな日に あの場所へ。。。」
朝から続く雨に 彼女の気持ちは閉口したままだった
観光地の小さな お寺で季節を楽しむ会を仕事がらみの女性グループに
参加を促されていた
年齢の上の方ばかりなので 断る理由を得ることができず
いま・・この時間を迎えてしまっている
☆
静かな庭に カメラのシャッター音が響く
「この花言葉 知ってる?」
「移り気。。?」
「うん」
「本当に七色に変わるのかな?」
「ごめん。。。心変わりをした。。。」
「え?・・・いま。。。?」
この花を彼に誘われるまま 見に来たのは間違っていた
私よりずっとずっと 彼のほうが 花を知っていた
彼のお祖母さんは華道家だった
今日は 洋館へ行きたいと 言うべきだった
甘い香りのする洋館へと。。。
そう思ったが もう遅かった
どんよりとした雲から 静かに雨が降り始め
彼と 私は道を別れた
☆
鏡の中の彼女は
今日の予定を全てキャンセルした
今日は洋館へ行くべき日なのだと 彼女は思い直し
2両編成の電車の時刻表を手帳から取り出した
ふと 高台から モノレールに乗り
路面電車に乗り継ぐことを心に決めて 彼女は カメラバッグを手にして
部屋のドアを開いていった